櫟野寺は、寺伝によれば、桓武天皇の御代、延暦十一年(792)に天台宗の開祖である伝教大師最澄が、比叡山延暦寺の建立に必要な用材を求めてこの地を訪れた際、霊夢を感じ、櫟の木に一刀三礼のもと、仏像を彫刻し安置したことに始まるとされています。本尊であり、国の重要文化財である「木造十一面観音坐像」は、「いちのの観音さま」とも呼び親しまれており、像高は三一二センチメートルにも及び、国重文では日本最大の十一面観音坐像です。平安時代の十世紀中頃の造像と考えられるもので、頂上に十一面の化仏を載せ、頭部と体部を一木とした堂々とした造りの尊像です。
また、十世紀末作の木造毘沙門天立像は、田村毘沙門天とも呼ばれ、寺伝では、鈴鹿山地の山賊追討の任に当たった坂上田村麻呂が当寺に祈願、その力により山賊の平定ができたとされ、その由来により毘沙門天立像を安置したと伝わります。
櫟野寺は、本尊をはじめ薬師如来坐像や地蔵菩薩坐像、そして観音像など二〇躯もの重要文化財の仏像を有する平安仏の宝庫であり、甲賀杣とも呼ばれ木材の産地であった山深い里こそ、仏像を安置し信仰を広めるのには適した地とされたのでしょう。また、天台宗を広める拠点寺院としての役割もあったと考えられています。
櫟野寺
アクセス
JR草津線「甲賀駅」より車で10分
T E L
0748-88-3890
住所
甲賀市甲賀町櫟野1377
時間
9:00〜16:00
休み
なし
駐車場
あり
拝観料
500円(大人)※ご本尊特別拝観日は800円、2018年10月までご本尊拝観は休止
- 本尊木造十一面観音坐像(重文)